最近は、“医療はサービス業”、“病院は企業”と考えるようになりました。患者さんが満足しなければ、どんな治療を行っても達成感がありません。また、病院が赤字では、よりよい医療を患者さんに提供することができません。自分の職位が上がるにつれて、責任の重さを感じています。視野を広げ、人脈を増やし、よりよきリーダーとなるために母校のビジネススクールに週末は通おうかと考えています。
わたしには心の師匠がいます。もう他界されて20年近くなりますが、国武自然先生という宗派に属さない坊主で、坂本繁二郎画伯の弟子でした。生前の国武自然先生がわたしに絵と言葉を贈ってくれました。絵は、何事にも動じないかの如く、悠然とたゆまなく流れている筑後川です。また贈っていただいた言葉は、”古きものが良きにあらず、新しきものが良きにあらず、良きものが良きなり”です。この言葉を座右の銘とし、自分自身を研鑽し、よりよいリーダーとなるべく精進しております。
上記の文章に続いて加筆です。
2002年から今日まで忙しい臨床の合間をみて、慶應のビジネスクールに通い、また丸の内にある慶應丸の内キャンパスの社会人向け講義にも積極的に参加しました。社会経済的側面から医療を考えることができるようになりました。また、ビジネススクールでの企業倫理の勉強時に医療倫理の大切さにふと気がつき、医療倫理の勉強方法を探す中、東京大学大学院医学系研究科 生命・医療倫理人材養成ユニット(CBEL)で勉強する機会に恵まれました。今はこの体験を生かすために新入医師研修時に丸一日利用倫理のワークショップを行っています。CBELでは法律の大切さも学びました。医療はとかく特別な世界と思われがちですが、社会生活のなかのひとつの領域です。当然に法的でも律されます。2006年から1年間と期限を定めて、毎朝5時から法律の勉強をインターネットで行いました。わたし自身が法曹界で仕事をすることは希望していないので、1年間と区切って勉強しました。法曹の仕組みや考え方を理解できれば医療の世界でも役に立つと思ったからです。以上のようにこの数年は、ビジネス・倫理・法律などと外に向かっても知識を広げました。
一方で、2003年より自分の内面的な深さを増すべく試行錯誤していたところ、コーチングに出会いました。わたしがご縁があったコーチングはCTIジャッパンのコーチングで他は知りません。その基礎コースと応用コースに通いいままでにないいろいろな学びと気づきを得ました。それがきっかけで始めたことが本邦初の保険診療でのセカンドオピニオンでした。人の話を十分に聞いていない、また聴けない現在の医療環境のなか、1人一時間の枠をとりセカンドオピニオ外来を帝京大学で始めました。保険診療でのセカンドオピニオン外来は本邦初でしたので、新聞・テレビ・ラジオなどのマスコミに取り上げていただき、それが契機となり、現在は日本の大きな医療機関ではセカンドオピニオンは当然のように行われるようになりました。日本でのセカンドオピニオンの創始者・啓蒙者としてのわたしの役目は終了したと思っています。現在は帝京大学で定期的なセカンドオピニオンは行っていません。またCTIジャパンの本邦初のリーダーシップコースに2006年1月より参加しました。3ヶ月毎に5日の合宿が4回ありました。これも言葉では言い表せない良い経験でした。
セカンドオピニオン外来を4年間行い、1人当たり1時間ゆっくりお話を伺って気がついたことがたくさんありました。特に日本の医療に改善すべき点はたくさんありますが、先進国で日本ほどすばらしい医療システムはないと思っています。ところが、それが十分に理解されていない現状が不満でしたし、現在も不満です。また医療は100%安全で結果が悪いことは医療ミスであるとの風潮に腹立たしさを覚えます。2006年4月から、日本の医療のすばらしさと医療は100%安全ではないことを視聴者に伝えるために、テレビ東京の主治医が見つかる診療所にレギュラー出演しています。月二回週末に収録があり大変ですが、得られるものも多く最近は楽しく収録に参加しています。
最近の興味は漢方です。血管外科はそれに相当する内科領域(血管内科)がないため、内科的な患者さんも多数見えます。それも他の医師や病院でやることがないと告げられている方々です。そのような患者さんに以前はわたしの知る範囲の病気ではないのでご縁がありませんでしたねと丁重にお断りしていました。行くところがなくて困っている患者さんに何かの治療をと思ったときに漢方に出ありました。漢方は西洋医学的な病名で治療がきまるのではなく、患者さんの全体からの症状(証)で投薬ができます。つまり西洋医学で行き詰まったときっでもしっかり漢方薬は存在するのです。そこで冷え症外来と称して漢方外来を行っています。いまは、漢方の勉強を座学で行い、また機会ある毎に駒込の漢方松田医院で診療を拝見しています。松田医院院長の松田邦夫先生は東洋医学会の会長も務めた日本漢方の重鎮でひとつでも多くのものを吸収しようと思っています。
日に日に国民のなかで確実に格差が広がっていると感じています。わたしができることは医療分野から格差の少ない社会をつくることと思っています。医療はセイフティーネットです。だれでも必要な医療は受けられる当たり前の仕組みが必要と思います。これから医療費が増加すると予測されていますが、ではお金のある人がさらなるより良い医療を受けられるという制度が適切なのでしょうか。人々は支え合いながら生きていくものと思っています。そして安心が必要です。すくなくとも医療に安心がなければいきいき生活をできるかたは限られるのではないでしょうか。そんな思いから“いきいき安心ささえあいネットワーク”を立ち上げました。
今後も“運と縁と勢い”で残りの人生を駆けていきたいと思います。 |