新見正則のホームページ 百花繚乱
新見正則のブログ
冷え症外来
漢方外来
冷え症外来
下肢静脈瘤のはなし
スポーツドクター
漢方嫌いであった医師による漢方の魅力を語るサイト
動画メッセージ
いきいき安心ささえあいネットワーク
セカンドオピニオン
 

投稿文・エッセイ

 

血管外科グループの近況

帝京大学外科学教室年報2003(血管外科)

インデックスに戻る

 

現在、血管外科は、宮澤幸久(教授)、新見正則(助教授)、波多野稔(助手)、白杉望(修練生)、矢吹志保(大学院生)と研修医で、臨床・教育・研究を行っています。宮澤は中央検査部部長の職にあるため、外来診療と教育をおもに行っています。

 

まず、血管外科とは何かからお話を始めます。新見のホームページ (www.mniimi.com) 上には血管外科研修医募集の項目がありますが、その中からの引用です。

 

帝京大学付属病院では、血管外科は一般・消化器外科のひとつのグループです。ですから、血管外科が専門的に扱える一般・消化器外科医となることを目標としています。帝京大学付属病院では基本的に、心臓の手術と補助循環を使用する大血管の手術は心臓血管外科が扱い、補助循環を用いない動脈や静脈の手術は血管外科が扱うことになっています。心臓血管外科が心臓血管領域のスペシャリストを志すカリキュラムであることに対して、血管外科のカリキュラムは血管外科が専門的に扱える一般・消化器外科医を育成することにあります。

 

上記の研修医募集内容で訴えているキーワードは付加価値です。これからの時代は、個人も、組織も、病院も付加価値を求められる時代と考えております。血管外科は、広く一般・消化器外科が扱え、かつ血管外科というスペシャリストであるとの位置づけです。

 

ここ数年は扱う患者さんの数が増えており、血管外科の手術総数、総収入とも着実に増加しています。患者数増加を図るために、日本人の1/4から1/3が罹患していると言われる下肢静脈瘤の患者さんを集めることから始めました。全人口の1/3が罹患しているとの数字は、軽症例の下肢静脈瘤も含めての話ですが、未発掘の多くの患者さんが存在していることは事実です。また、患者さん自身が診断可能なため、まず直接に患者さんに信号を送ることにしました。4年前に始めた下肢静脈瘤の公開講座、3年前に立ち上げた下肢静脈瘤のホームページ(www.mniimi.com)、そして昨年書き上げた一般向けの本(下肢静脈りゅうを防ぐ・直す。講談社)。最近は一般放送(レディース4。東京12チャンネル 2003年4月15日)にも出演し下肢静脈瘤の啓蒙と患者さんの獲得を行っています。下肢静脈瘤はみんながハッピーな病気です。まず患者さんは確実に良くなります。また入院期間は3泊4日で30万円〜40万円ですので、病院の収入増加・在院日数の短縮になります。術前・術後を通してほとんど手が掛からない疾患ですので、看護師サイドにも好評です。また、研修医が指導医のもとで手術が出来る疾患ですので、研修医の手術の修練にも極めて有効です。

 

下肢静脈瘤の患者さんは全国より受診され、また多くの開業医の方々からご紹介を頂いているために、数ヶ月先まで予約で一杯です。早急な手術を希望する患者さんのために、新見の外勤先の町谷原病院と、白杉の外勤先である愛誠病院でも下肢静脈瘤の手術を行っています。

 

下肢静脈瘤で院内・院外ともある程度血管外科が有名になると、自然と他の血管疾患も増加してきました。最初に血管外科の存在が認知されたことで、紹介をスムーズにしていただける環境になったのだろうと考えています。われわれが血管外科として扱っている疾患以下にお示しするような、頭蓋内・胸腔内を除く血管疾患です。脳動脈瘤のような頭蓋内の血管疾患は脳神経外科が、また冠動脈バイパス手術・心臓弁置換術・胸部大動脈瘤などは心臓血管外科が扱っております。それぞれの疾患の詳細は新見のホームページ (www.mniimi.com) 上の血管疾患のはなしを参照してください。

 

拡張性動脈疾患 :腹部大動脈瘤、四肢の動脈瘤、内臓動脈瘤、頸動脈瘤など
閉塞性動脈疾患 :下肢閉塞性動脈硬化症(ASO),バージャー病、腸間膜動脈閉塞症、動脈塞栓症、頸動脈狭窄、血管性インポテンツ、レイノー病など
静脈疾患:下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、肺梗塞(エコノミークラス症候群)
その他 :人工透析用のシャント作成術、リンパ浮腫、胸郭出口症候群、ベーチェット病による血管病変、下腿潰瘍など

 

血管外科の外来は、月曜日の午前(新見・白杉)、水曜日の午前(宮澤・新見・波多野)、金曜日の午後(新見)です。また新見は医療全般に関するセカンドオピニオン外来を木曜日と土曜日の午前中に行っています。外来以外の時間はほとんどが手術です。緊急手術を要する疾患も多く、血管外科チームは常時、責任をもって手術ができる医師が二人以上オンコール体制で24時間365日構えています。特に腹部大動脈瘤の破裂は、如何に早く手術により動脈瘤を切除し、血行再建を行うかが救命率に直接影響します。近隣の病院からの紹介が非常に多く、すべてを受け入れています。救急外来より直接手術室に搬入され、手術が終了後、外科病棟のリカバリー室に収容されます。このような迅速な体制が常時取れる理由は、麻酔科の全面的な協力、看護師サイドの精力的な働きと、急患を必ず収容するという帝京大学医学部附属病院のポリシーのたまのもと考えています。

 

次に教育のお話です。血管外科領域の教育(統合講義、総合講義)はすべて宮澤が行っております。新見は2年生の医学英語と4年生の診断学の講義を数時間のみ行っています。ベットサイドの教育は全員で学生さんに接しています。学生さんには、まず卒業後帝京大学に残ることを強く勧めています。そして出来れば外科を希望する科のひとつに入れてくれるようメッセージを送っています。理想は血管外科を志す後輩が一人でも増えることです。幸い研修医には数人ほど非常に血管外科に興味をもってくれるものがいます。

 

研究面では、精力的に移植免疫学の分野で研究を進めています。新見が冲永留学生として英国オックスフォード大学での勉強を終え帰国した1998年に“どらえもんラボ”というなんとなく不謹慎な名前を付け研究をスタートしました。現在は帝京大学の大学院生の他、日大・慶應の大学院生や医師が実験に集まっています。また中国からの留学生も今秋より参加予定です。手術用顕微鏡を用いたマウスの心臓移植の実験を行っています。大学院生は、このモデルで移植免疫学の基礎を学びます。拒絶反応の抑制や、心筋障害の研究を通して、Scientific Surgeon としの素質を身につけます。この間の研究成果は学会などで発表し、また論文として、医学博士取得への土台をつくります。マウスの心臓移植自体は、マイクロスコープを用いた血管吻合の絶好の練習であり、臨床での微小血管吻合に即座に応用可能です。目標とする英文雑誌は Transplantation (インパクトファクター4点) で、現在のところ同雑誌に約12編が投稿済みまたは投稿中です。

 

以上簡単ですが、血管外科の近況をお話しました。何の縁か血管外科という場で苦楽をともにする仲間が、それぞれの価値観に従って、より充実した人生を送れるように、お互いに切磋琢磨できる環境を作りたいと考えています。

 

    page top
このサイトについてサイトマップ   Copyright (C)2007 Masanori Niimi All rights reserved.