総選挙の行われた9月11日に某民放の特別企画医療番組に出演してきました。医師10人、ゲスト5人、司会者2人です。収録は3時から9時まで、その前に打ち合わせなどあり、午後はまるまる潰れました。
僕の信条は、日本の医療は改善すべき点は多々あるが、世界のなかでもすばらしい医療制度のひとつであると言うことです。国民皆保険で、どの医療機関にもかかれて(フリーアクセス)、そして世界水準の医療を享受できる(グローバルスタンダード)。すばらしいではありませんか。もちろん、日本の医療にも改善すべき点は多々あります。医療ミスを減らすこと。悪徳医師を追放すること。欧米で認められている薬を国内でもすばやく認可すること、などなどです。
お仕事でアメリカに駐在された方々がよく口にされる、アメリカの医療はすばらしい、あれを日本も目指すべきだ。たしかにそれも正論です。日本の医療費は31.5兆円、一方アメリカは200兆円、国民人口はアメリカは日本の倍ですので、日本に換算すると100兆円。これだけのお金をつぎ込めば、日本もすばらしい医療になります。単純に建物や器械に3倍の資金を投資でき、医師や看護師(所得が同じとして)の人数も3倍になります。
日本の医療のすばらしさは、たった31.5兆円でアメリカ並の医療水準を維持していることです。その上アメリカは、貧乏人の医療と、お金持ちの医療で雲泥の差があります。日本は生活保護の方も、内閣総理大臣も同じ医療が受けれます。すばらしいではありませんか。
みなさんが所得で上位10%に入ればアメリカの医療が良いでしょう。しかし、日本の多くの方は(いわゆる中流階級以下)、日本の医療の方が、断然おとくと思います。日本が高々31.5兆円ですばらしい医療を提供できる背景には、医療従事者の献身的努力があります。サービス残業などはあたり前という雰囲気が当然のように存在します。労働基準法にほとんど違反する勤務を行いながら、なんとかやってこれたひとつの理由は、患者さんからの感謝の言葉です。
最近はこれが極端に少なくなりました。むしろ、何かおこれば医療ミスではないかとの疑念が渦巻いています。医療に100%安全はありません。危険を考慮して、十分な話し合いを持ち、お互いが納得しておこなうことが医療です。成功すればあたりまえ、失敗すれば医療ミスでは、医療サイドが報われません。
わたしは、一度日本の医療機関すべてが労働基準法に則って、働くことを切望します。かならず医療は破綻します。しかし、医療従事者の善意で、隙間を埋めるにはそろそろ限界です。破綻が早くくれば、修正、改善も早く行われます。
このすばらしい日本の医療は存続すべきと思います。わたしは外科医で日本中から患者さんがきてくれます。わたしにとっては医療制度がアメリカ的になるととが自分の収入面からは最適です。いまの何倍もの収入を得られます。しかし、自分の家族や日本国民の将来を鑑みると、現在の国民皆保険制度を維持しながら改善していくことが大切と思います。最大の必要事項は、医療費をせめてアメリカの半分は支給することです。つまり50兆円です。
長くなりましたが、上記のようなことを番組で発言しようと思って乗り込んだのですが、論旨がいい加減な質問の数々と、ゲストの医療バッシング、などが重なり、まったく自分の意見が言えない6時間でした。またこの6時間がマスコミサイドの視聴率稼ぎに利用され、おもしろおかしく2時間強に編集されると思うと、憂鬱でなりません。 |