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投稿文・エッセイ

 

エッセイ

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日本の医療について(2006.9.28)

日本の医療は、国民皆保険で、フリーアクセス(どの病院に行くかは患者さんが決められる)で、そしてグローバルスタンダード(世界標準以上)な医療を受けられるすばらしいものと自負しています。もちろん、改善すべき点は多々ありますが、上記の3点は必ず守るべきと思います。特に国民皆保険は大切で、社会保険料を支払っていれば、当然に適切な医療が受けられる権利が国民にあります。セイフティーネットとしての国民の医療を守るために、保険診療の充実を目指しています。富めるものも、貧しいものも、安心して生活できる社会を作りたいと思います。愛誠病院下肢静脈瘤センターが可能な限りの治療を健康保険の範囲で行うこと、またそれがかなわない場合でも、健康保険での支払金額以内に固執する理由は、そのようなわれわれのポリシーによります。

 

 

村上陽一郎先生の口演を聴いて(2006.1.27)

昨日、慶應丸の内シティーキャンパスの夕学50講にて、村上陽一郎先生の口演”現代における教養とは”を聴いてきました。すばらしい口演で、心に響くものでした。

 

最後に先生が出されたパワーポイントから、教養ある人とは以下の要素がある人だそうです。

 

(1)多面的にものを考える。
(2)自分の立場を常に「相対化」できる
(3)どういう相手にも自分の考えを伝えられる
(4)絶対否定や絶対肯定に走らない
(5)カウンターバランスがとれる
(6)自分の評価基準(規矩)をきちんと持つ

 

そして、教養人と知識人は同じではないと言われました。
知識がなくても品格ある教養人がいるということです。
例を挙げたものが、以前先生の家の井戸を埋めるときの話しです。井戸を埋める土建屋の親父さんが、誰かをよんで(神主でも、坊主でも、神父でも)井戸に感謝の意を表さないと埋めれないと言ったそうです。先生は、この親父さんは教養人だと表現しました。

 

自分で正しいものを持って、自らは外れない。

 

上記のことが教養人の大切な素養とのことです。
この紙面では、十分に感動を伝えられません。機会があれば、また先生の口演を拝聴したと思っています。

 

 

憲法について(2005.9.22)

ひょんなことから、憲法と法律の本を読み始めています。愛誠病院の手術控え室に法律の本があり、最近は読み始めると引き込まれるようにむさぼり読んでいます。丁度その時に、アマゾンで、”高校生からわかる日本国憲法の論点”伊藤真著、を購入し読みました。

 

約30年ぶりに憲法を通読しました。そして、”高校生からわかる日本国憲法の論点”で指摘されていたことは、

 

まず、一番大切な条項は13条であること。
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
基本的人権を認めている条項です。

 

そして、99条の意味
第九十九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
この中に、国民という言葉がないこと。つまり、憲法は国家(公務員)に向けたものであり、極論すれば国民は憲法を守る必要がないこと。一方法律は、国家が国民を権力で規制するものであることです。

 

憲法は、国家権力を制限し基本的人権を守るためのものだそうです。

 

すると国家権力側の方々には、憲法は足かせですから、改憲論が自然と生まれます。
また、憲法の名宛人は国家ですから、国民の義務などは殆ど書かれてないそうです。
国民の義務は教育(26条)、勤労(27条)、納税(30条)のみ記載されています。

 

自民党が衆議院で過半数を大きく超え、3分の2議席を与党で占める状態です。ますます、改憲論がでることでしょう。野党第一党の民主党も改憲賛成のようです。新聞には憲法の話しが沢山でてきます。わたしも憲法は少し知っているつもりでした。しかし、上記の本を読んでみて、自分が全く憲法の本質を理解していないことに気づきました。まったく憲法のことを知らない自分が、改憲に関してはこう思うという自分なりの意見を持っていました。それがいまでは恐ろしくてたまりません。憲法改正にわたしは現状では中立的立場です。ただ憲法の本質を正確に知らずに、改憲論が先行することは危険であると思う今日この頃です。

 

 

某バラエティー医療番組への出演(2005.9.11)

総選挙の行われた9月11日に某民放の特別企画医療番組に出演してきました。医師10人、ゲスト5人、司会者2人です。収録は3時から9時まで、その前に打ち合わせなどあり、午後はまるまる潰れました。

 

僕の信条は、日本の医療は改善すべき点は多々あるが、世界のなかでもすばらしい医療制度のひとつであると言うことです。国民皆保険で、どの医療機関にもかかれて(フリーアクセス)、そして世界水準の医療を享受できる(グローバルスタンダード)。すばらしいではありませんか。もちろん、日本の医療にも改善すべき点は多々あります。医療ミスを減らすこと。悪徳医師を追放すること。欧米で認められている薬を国内でもすばやく認可すること、などなどです。

 

お仕事でアメリカに駐在された方々がよく口にされる、アメリカの医療はすばらしい、あれを日本も目指すべきだ。たしかにそれも正論です。日本の医療費は31.5兆円、一方アメリカは200兆円、国民人口はアメリカは日本の倍ですので、日本に換算すると100兆円。これだけのお金をつぎ込めば、日本もすばらしい医療になります。単純に建物や器械に3倍の資金を投資でき、医師や看護師(所得が同じとして)の人数も3倍になります。

 

日本の医療のすばらしさは、たった31.5兆円でアメリカ並の医療水準を維持していることです。その上アメリカは、貧乏人の医療と、お金持ちの医療で雲泥の差があります。日本は生活保護の方も、内閣総理大臣も同じ医療が受けれます。すばらしいではありませんか。

 

みなさんが所得で上位10%に入ればアメリカの医療が良いでしょう。しかし、日本の多くの方は(いわゆる中流階級以下)、日本の医療の方が、断然おとくと思います。日本が高々31.5兆円ですばらしい医療を提供できる背景には、医療従事者の献身的努力があります。サービス残業などはあたり前という雰囲気が当然のように存在します。労働基準法にほとんど違反する勤務を行いながら、なんとかやってこれたひとつの理由は、患者さんからの感謝の言葉です。

 

最近はこれが極端に少なくなりました。むしろ、何かおこれば医療ミスではないかとの疑念が渦巻いています。医療に100%安全はありません。危険を考慮して、十分な話し合いを持ち、お互いが納得しておこなうことが医療です。成功すればあたりまえ、失敗すれば医療ミスでは、医療サイドが報われません。

 

わたしは、一度日本の医療機関すべてが労働基準法に則って、働くことを切望します。かならず医療は破綻します。しかし、医療従事者の善意で、隙間を埋めるにはそろそろ限界です。破綻が早くくれば、修正、改善も早く行われます。

 

このすばらしい日本の医療は存続すべきと思います。わたしは外科医で日本中から患者さんがきてくれます。わたしにとっては医療制度がアメリカ的になるととが自分の収入面からは最適です。いまの何倍もの収入を得られます。しかし、自分の家族や日本国民の将来を鑑みると、現在の国民皆保険制度を維持しながら改善していくことが大切と思います。最大の必要事項は、医療費をせめてアメリカの半分は支給することです。つまり50兆円です。

 

長くなりましたが、上記のようなことを番組で発言しようと思って乗り込んだのですが、論旨がいい加減な質問の数々と、ゲストの医療バッシング、などが重なり、まったく自分の意見が言えない6時間でした。またこの6時間がマスコミサイドの視聴率稼ぎに利用され、おもしろおかしく2時間強に編集されると思うと、憂鬱でなりません。

 

 

けいゆう病院での口演(2005.7.16)

昨日、横浜のけいゆう病院の医師向けに、口演をしました。ホテルニューグランドのペリーの間という由緒正しい場所で、演題は セカンドオピニオンから見えるもの として一時間お話ししました。セカンドオピニオンは2003年4月より始め、大学病院としては本邦初の開設でした。今は、多くの病院がセカンドオピニオン外来を設けています。

 

けいゆう病院には、わたしが内視鏡や超音波、血管造影などを永寿病院での研修医の頃に教えていただいた井筒先生や、慶應大学医学部の同級生の千葉先生、藤田先生、佐藤先生がいていつもと違って身内が多く少し緊張した口演でした。外科には先輩の嶋田先生、後輩の松本先生と研修医のころからのわたしを知っている方々の前で、なんとなく偉そうに話しをするのは、やりにくいものです。でも話し始めますと、いつものようなペースで好きなことをいろいろとお話させていただきました。

 

 

医師の勤務実体について(2005.7.9)

労働基準法によると一日労働時間は8時間、週40時間を超えて労働させてはならないとされています。この法廷労働時間を超えて労働させる場合は、過半数の書面による協定(いわゆる36協定)を締結し、行政官庁に届け出ることによって、はじめて時間外労働(残業)が可能となります。時間外労働には厚生労働大臣が定める基準があり、原則として1週15時間、1ヶ月45時間、3ヶ月120時間、および1年360時間という限度が設けられています。

 

時間外労働に関しては、割り増し賃金の支払いが必要となり、時間外労働には2割5分以上、休日労働には3割5分以上、また深夜労働(午後10時から午前5時)は2割5分以上の支払いが必要となります。深夜労働と時間外および休日労働は重なる場合はダブルでカウントされます。

 

さて、医師を含めた医療従事者で実際上記の様に労働基準法で守られている方々は少ないのではないでしょうか。

 

まず、研修医に対して2005年6月3日以下の判断が下されました。

 

大学病院で働く研修医が労働基準法や最低賃金法の「労働者」に当たるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第二小法廷(福田博裁判長)は3日、「労働者に当たる」とする初判断を示し、大学側の上告を棄却する判決を言い渡しました。「奨学金」などとして研修医が受け取っていた額と法定の最低賃金との差額を支払うよう大学側に命じた二審判決が確定しました。最高裁が研修医を労働者と認めたことで、労働時間の制限や労働組合を結成する可能性など、研修医の待遇改善を進める上で法的な根拠が確立されました。

 

世間の人々にとっては当たり前と思われる判断ですが、殆ど無給で奴隷の様に働いていた経験を持つわたしの世代の医師にはびっくりする判決です。でもそれが、当たり前なんです。研修医の献身的努力で成り立っている病院も少なくありません。

 

研修医以上の医師も多くは、労働基準法の規制範囲を超えて、人道的観点からボランティアのように働いています。日本のすばらしい医療も、医療従事者の献身的努力でなんとか保たれています。

 

献身的努力はそろそろ限界です。全国の病院職員全てが労働基準法に沿った勤務を行い、ほころびを早く世間に露呈し、行政が改善策を早急に出さざるを得ないようにすることも必要ではないかと考えます。

 

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